公務員・教員
留学先や大学で培った国際感覚を活かし、
多様性を受け入れ、誰もが共生できるまちづくりを支えたい。
奈良市役所の採用試験合格、おめでとうございます。
公務員を志したきっかけについてお聞かせください。
最初は公務員志望ではなく、実は音楽業界を志望していました。公務員を視野に入れるようになったのは、3年生の2月頃です。公務員をめざして勉強している友人から「一緒に勉強してみようよ」と誘われたことがきっかけで、「民間企業の試験にも役立つかもしれない」と思い、何気なく公務員試験の勉強をはじめました。それまで公務員は縁遠い存在でしたが、公務員について調べていくうちに、奈良市は民間企業絵も一般的に取り入れられているSPI(Synthetic Personality Inventory:総合適性検査)を筆記試験に採用していることを知り、「SPIでも公務員を狙えるんだ!」と一気に身近な存在として感じるようになりました。「今からでも頑張れば合格できるかもしれない」。そう思うと勉強にも身が入り、4月頃からは公務員一本に絞って対策に取り組んでいきました。
民間企業から公務員への進路変更に不安はありませんでしたか?
もちろん不安はありました。しかし、音楽業界は「音楽が好き」という気持ちを、公務員は「奈良が好き」という気持ちを原動力に働くので、根底の部分は同じです。また、私は国際学部生として、グローバルな視点や感覚を養い、多様な文化や価値観への理解を深めました。奈良市は「多様なつながりが生み出す共生のまち」を目標としているため、培ってきた国際感覚を活かし、誰もが共生できるまちづくりを支えていけると思っています。
大学ではどのような学修に取り組まれたのですか?
1年次から大学の「ベルリッツTOEIC講座」を受講し、試験に出る英単語の覚え方やTOEICテストの解き方のコツなど、実践的なノウハウを教わりました。正課授業の「Exam Prep.」でもTOEICの過去問題を繰り返し解くことで、着実に実力がアップしたと感じています。「Intensive English」や「Advanced English」など、オールイングリッシュの授業も多く、日常的に生きた英語に触れることができ、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を支える高い英語運用能力が身についたと感じています。英語が好きなので、プライベートでも海外の動画コンテンツを英語で視聴するなど、楽しみながら英語学修に取り組むことができました。
「異文化理解」という授業では、母国語が英語の先生やフランス語の先生など、文化的背景の異なる複数の先生が講義をしてくださるので、多様な文化や価値観に触れることができました。それらの講義のおかげで、日本と世界の違いを認識することができ、異文化を受け入れる柔軟な考え方も持てるようになりました。
3年次からは専門的な学修も増えましたが、特に「Japanese Law and Society」という授業は「英語で日本の法律を学ぶ」という専門性も難易度も高い授業でしたね。法律の勉強は日本語でも難しいですが、それをすべて英語で学ぶため、最初は法律や経済の専門用語についていくのがやっとの状態でした。しかし、学修を進めるうちに、難易度が高いことで得られる知識も多く、知的好奇心が高まっていくのを感じました。
この知的好奇心は演習(ゼミ)での研究にも活かされ、より専門的な「戦後ドイツの歴史認識の変遷」という研究テーマへとつながっていきました。ナチスドイツが起こした悲劇の歴史を辿りながら、歴史認識の変遷を研究しました。この研究は学生研究発表大会でも高く評価され、審査員の先生方から後日メールで「この部分がとても興味深かった」「ここをさらに調べると、もっと深みが出るよ」など、たくさんのコメントをいただきました。
大学生活で印象に残っていることはありますか?
1年次にアメリカのナショナル大学へ留学したことが印象に残っています。当時は日本人留学生が多く、日本人のみのクラスもあったほどです。「日本人同士で一緒にいては留学の意味がない」。そう思った私は積極的に現地の学生や先生とコミュニケーションを取り、放課後も大学に残ってよく雑談をしていました。ホストファミリーとも一緒に多くの時間を過ごし、英語が間違っていても臆することなく、楽しく交流することを意識しました。ホストファミリーがさまざまなホームパーティーに連れて行ってくれたので、行く先々で新たな交流が生まれ、「私はこんな人間です」と初対面の人に自己紹介する機会も増えていきました。
そのような生活を続けているうちに、「日本人だから」「女性だから」「大学生だから」などのレッテルを気にしなくなり、ありのままの自分で過ごせるようになりました。周りの友人も「日本人の女子大生」としてではなく、私という人間を見て接してくれました。この留学の経験から、多様性を自然と受け入れて理解しようとする感覚も育まれたと感じています。奈良市役所でも多様な人を支援する立場になるので、このような力は必ず役に立ってくると思っています。
試験本番に向けて、どのような準備をされたのですか?
まず、3年生で就活実践キャンプに参加し、面接の練習に励みました。企業の人事担当者や先生、内定をいただいている先輩などが面接官となり、本番さながらの模擬面接をしてくださるので、非常に役立ちました。ここまで本格的な面接の練習は初めてだったので、なかなか思う様に答えることができませんでしたが、厳しくも的確なフィードバックは、どれも当時の私にとっては貴重な意見でした。指摘された内容を改善するだけで、見違える様に受け答えがスムーズになっていき、短期間でも成長を感じることができました。
公務員採用試験において面接は非常に重視されています。そのため、友人と想定される質問を洗い出し、受け答えの内容を考え抜きました。キャリアセンターで面接の練習をしていただく人も多いですが、私の場合は自分らしい受け答えができるように、自分の力でやり抜くことにしました。しかし、客観性も大切なので、複数の友人に意見を聞き、自分の強みと弱みをヒアリングしながら、友人と何度も面接の練習を行い、しっかり対策を行いました。
本番の試験でも、その成果は発揮できましたか?
SPIと面接では、対策してきた成果をある程度発揮できたと思います。しかし、その前の書類選考は今年度から、真っ白な紙に自分の強みや特徴を自由に表現するという難易度の高い内容に変わりました。奈良市を自由にPRする動画選考もあり、型にはまった考え方では突破できない選考内容に少し戸惑いましたね。
一次面接は公務員らしい堅実な内容でしたが、二次面接は逆にリラックスした雰囲気でした。私の人間性を正面から判断しようとする姿勢が感じられたので、自分の思いをしっかり伝えられるように意識しました。「奈良市役所で、どんな仕事をしたいですか?」と聞かれた時も、多文化共生の施策や支援を実施したいという想いを具体的に伝えることができました。
自分の想いを全て伝えることができたと感じましたが、就職活動直前になって公務員に進路変更をしたので、やはり合格発表の日までは不安でしたね。友人と一緒に合格発表のサイトを見て、自分が合格していることがわかった瞬間は本当に嬉しかったです。短期間ではありますが、頑張り抜いたので、少し肩の荷がおりたような気がしました。ホッとしたのも束の間、「私はこれから本当に奈良市役所で働くんだ」と思うと、公務員としての覚悟や実感が湧き、自然と気が引き締まりました。
今後の抱負についてお聞かせください。
公務員として、やるべきことをきちんとこなす。そのために、今からできることをやりたいと思っています。現在、奈良市では何が必要とされているのか。どのような国籍の方々が住んでいるのか。奈良市で暮らす外国人が減っているのはなぜか。このようなことを事前に調べ、見えてきた課題の考察をしていくつもりです。そして、実際に現場に出てからも、留学先や大学で培った国際感覚を活かして、その答えを考え続けていきたいです。その先に、多様性を受け入れ、誰もが共生できるまちづくりが実現すると思っています。
※掲載内容は取材当時のものです。