公務員・教員

基地を抱える沖縄の警察官として、
女性を守り、寄り添い続ける存在になりたい。

沖縄県警察 合格手登根 碧 さんAoi Tedokon法学部法律学科卒(2021年3月) / 沖縄県立 具志川高校 出身

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沖縄県警察合格、おめでとうございます。
警察官を志したきっかけについてお聞かせください。

ありがとうございます。
警察官には小学生の頃から漠然と憧れを抱いていました。それが具体的な目標へと変わったのは、私の地元である沖縄ならではの事情が関係しています。沖縄には米軍基地が点在していますが、中学・高校と成長するにつれ、米軍絡みの犯罪の多さを感じるようになりました。特に、米兵による性犯罪が後を絶たないことに、強い憤りを覚えました。
私が生まれる前のことですが、95年に起きた米兵による少女暴行事件を機に、沖縄では反基地感情が一気に爆発し、日米地位協定の改善へとつながっていきました。こうした背景があるにもかかわらず、未だに米兵による性犯罪はなくなりません。事件として発覚していないものも数多くあると思います。同じ女性として、こうした性犯罪をできる限りなくしていきたい。被害者に寄り添っていきたい。そのような想いから、警察官を明確な目標にしたのです。

警察官をめざし、どのような学修に取り組まれたのですか?

「刑法総論」や「憲法学」、「警察法令概論」に「刑事裁判と法」など、法律系の正課授業を幅広く履修していきました。警察官という職務の背景にある法秩序を学修しただけでなく、学びをきっかけに、「加害者と被害者の人権」について考えるようになり、多くの気づきを得ることができました。
また、2年生から4年生まで履修した「公務員特別演習」では、元警察官の先生から多くの貴重なお話を聞くことができ、警察官に必要な知識や姿勢を学ぶことができました。グループに分かれて議論する機会も多く、多様な警察官像を知ることができたと感じています。ゼミでも、警察官のOB・OGの方から直接お話を聞かせていただく機会があったのですが、その中で、今でも印象に残っている質問がひとつあります。それは「目の前に自分の親と他人が倒れていたら、どちらを助けるか?」というもの。当時の私の素直な答えは「親」でしたが、先輩の答えは「助かる方を助ける」でした。その答えを聞いた瞬間、警察官に必要な冷静さや覚悟を突きつけられた気がして、改めて職責の重さを痛感したのを覚えています。
また、米軍基地のある沖縄で警察官の職に就くには英語力が必須だと考え、語学学修にも力を入れました。講義も課題もすべて英語で実施される授業や、英書を読み込む授業など、さまざまな授業を履修。また、実際に海外も体験しておきたかったので、「海外フィールドスタディ」や「グローバルキャリア体験」などにも参加しました。日本を飛び出し海外の文化や人々と触れ合う中で、度胸や積極性を磨くことができたため、私にとっては貴重な体験でしたね。

大学生活で印象に残っていることはありますか?

沖縄出身の私にとって忘れられない出来事は、2019年に起こった首里城の火災と、その復興のために大学のサークルで取り組んだ募金活動です。毎年、年末に帰省した際は必ず首里城へと足を運び、沖縄に帰ってきたことを実感していただけに、首里城が焼失したと聞いた時はとにかくショックで、にわかには信じられませんでした。火災が起こったのは10月でしたが、長年にわたって続いてきた復元工事が2月に終わったばかりだったので、喪失感もとても大きかったです。
沖縄人にとって首里城は、シンボルであり、誇りであり、心の支えでもあるため、私が大学で所属していた「奄美・沖縄会」というサークルでも、再建に向けた支援金を募ろうという気運が自然と高まっていきました。さらに、「奄美・沖縄会」のOB・OGの方の協力もあり、火災の約1週間後の学園祭では、早速募金活動を実施し、2日間の活動で5万円近くの支援金を集めることができました。募金活動をする中で、何よりもうれしかったのは、支援金と共に多くのあたたかな言葉を掛けていただいたことです。遠く離れた沖縄のことに胸を痛めてくださり、慰めや励ましの言葉を掛けていただいた時は、本当に涙が出る思いでした。

採用試験に向けて、どのような準備をされましたか?

1年生から「Sコース(特修講座)」で採用試験対策に取り組みました。しかし、私にとっては講座のレベルが高く、最初は勉強についていくのがやっとの状態でした。置いていかれまいと必死に食らいついてはいましたが、ズルズルと後退していくような感覚でした。そんな私の姿を見ていた先生が、特別に少人数制のアスリートクラスへの編入を手配してくださったんです。私のペースに合わせてマンツーマンで教えてもらえるアスリートクラスに入ってからは、理解スピードが一気にアップ。試験本番に向けて着実に学力を伸ばしていくことができました。また、Sコースには、私と同じように警察官をめざす学生がたくさんいたので、お互いに刺激し合いながら試験に向けて進んでいくことができたと感じています。
面接対策としては、「公務員特別演習」で実践的な練習をしていただけたので、人前で話すのが苦手な私にとって、大変有意義な授業でした。さらに、採用試験直前には面接対策講座も受講することができ、細かな部分の最終チェックができたので、とても感謝しています。公務就職支援室でも、志望動機や自己PRを記載した面接カードの添削をしていただいたり、模擬面接をしていただいたりと、強力なサポートを受けることができました。
このような準備のおかげで、「取り繕うことなく素直な自分で面接を受けよう。それで落ちてしまったら仕方がない」という気持ちで試験に臨むことができました。

本番の試験でも、その成果を発揮できましたか?

そうですね。筆記試験は、Sコースや正課授業での学修がそのまま役立ちました。幅広く学んできた成果を発揮できたので、手応えも自信も十分でした。しかし、続く2次の論文試験では一転。多くの過去問に取り組み、自信を持って臨んだつもりだったのですが、苦戦という印象でした。
もともと文章を書くのは得意だったので、あとは時事問題や沖縄県警の施策について、どこまで深く理解しているかが重要だと考えていました。試験前に先生からもそのようなアドバイスを受けていたのですが、出題された「沖縄県警が取り組んでいる各施策を、より良い生活のためにどう活かしていくべきか」というテーマに対し、自分の中で満足のいく回答を出すことができませんでした。かなり幅広いテーマだっただけに、私の書いた施策が最適だったのかどうかわからず、モヤモヤした気持ちのまま試験は終了。帰り道、他の受験生たちの会話の中の「サイバー犯罪」というキーワードが耳に入ってきた時、「あー、これだ」と思いました。サイバーテロが増加してきている昨今、こうした取り組みの重要性は感じていましたが、十分な知識を身につけていませんでした。結果として試験には合格できましたが、まだまだ学修していく必要があるなと、気を引き締め直したのを覚えています。
面接に関しては、自分を信じて堂々と受け答えすることができたので、特に不安はありませんでしたね。唯一不安だった論文も、蓋を開けてみれば高得点だったので、試験に向けて努力してきたことに間違いはなかったんだと実感しました。

合格を知った時は、どんな気持ちでしたか?

ネットで自分の受験番号を見つけた時は、幼い頃からの目標が実現したわけですから、心の底からうれしかったです。これまでずっと試験に向けて努力してきたので、肩の荷が下りるとは、まさにこのことだなと思いましたね。しばらくは、警察官という目標に近づけた喜びでいっぱいでしたが、後日行われた警察学校の研修で、想像以上の厳しいトレーニングや規律を目の当たりにし、「今のままの意識や体力ではダメだ」と、覚悟が一気に強くなりました。そのため、現在は毎日筋力トレーニングに励み、法律や英語の勉強にも力を入れています。

今後の抱負についてお聞かせください。

私が尊敬している経法大OBの警察官の方も、「警察学校は厳しいから覚悟しておけよ」と仰っていたのですが、臆することなく、同学年の仲間たちを引っ張っていくぐらいの気持ちで臨むつもりです。また、沖縄県警には、米軍関連の犯罪防止と県民保護を図る「渉外機動警ら隊」という組織があります。将来は渉外機動警ら隊の隊員として、女性を性犯罪から守り、寄り添い続ける警察官になりたいと思っています。

受験生の皆さんへのメッセージ

大学選びで大切なのは、自分の目標に合った大学を選ぶことです。入学後にどんなことができるのか、何を学べるのかをしっかり調べてください。そうすれば、きっと有意義な大学生活が送れるはずです。警察官などの公務員をめざしている人は、採用試験が最初の難関です。とにかく採用試験に合格しないと何も始まらないので、試験までは努力あるのみ。経法大には、その努力をサポートしてくれる環境が揃っているのでオススメですよ。
また、目標が定まっていない人は、焦らず大学に入ってから見つけていくのもいいと思いますよ。でも、学修環境や特徴は調べた上で進学先を決めてください。4年間という限られた時間を大切に使ってくださいね。

※掲載内容は取材当時のものです。

奄美沖縄会

奄美沖縄会は大阪経済法科大学に在学し、沖縄、奄美大島出身の学生で構成されています。
第48回経法祭では、沖縄県・鹿児島県出身の学生たちで結成された「奄美・沖縄会」と、経法祭実行委員会の学生たちが中心となって、首里城火災に対する支援金活動(ボランティア活動)が行われました。

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