公務員・教員
亡き父に約束した警察官の道へ。
少年犯罪に向き合う覚悟を胸に進み続けたい。
京都府警察の採用試験合格、おめでとうございます。
警察官を志したきっかけについてお聞かせください。
ありがとうございます。
警察官に憧れを抱くようになった最初のきっかけは、幼稚園の頃でした。父に連れられて参加した交通安全のイベントで白バイやパトカーに乗せてもらい、そのカッコよさにすっかり魅了されました。そこからずっと警察官への憧れは持ち続けていましたが、高校生の時はサッカー選手をめざし、本気で部活動に打ち込んでいました。ただ、3年間で思うような結果を残すことができず、トップレベルとの差も痛感。サッカーの道は諦め、警察官の道をめざすことに決めました。父はサッカー選手の夢を諦めずに追いかけてほしかったようですが、公務員をめざすための学修環境が整った経法大に魅力を感じた私は、「警察官をめざすために経法大へ行かせてほしい」、と父を説得して経法大に進学しました。
実際に経法大で学修に取り組んでみていかがでしたか?
1年生から「Sコース(特修講座)」を受講していましたが、趣味のバイクと車にお金を掛けるあまり、ついついアルバイトに力を入れてしまい、正直なところ十分に講座を活用できていませんでした。警察官を志す気持ちがなくなったわけではないのですが、どうにも勉強に身が入らない。そんな日々を過ごしていました。
「このままではマズイ」。本気でそう思いはじめ、ようやく勉強に本腰を入れ始めたのが3年生の終わり頃です。高校時代はサッカーばかりで基礎学修が疎かになっていたので、夜遅くまで図書館に残って自習したり、周りにいる警察志望の友人たちにお願いしてSコースの教材を使って勉強を教えてもらったりしながら、必死で採用試験に向けた勉強を進めました。最初からコツコツ勉強しておけば良かったのですが、結果として、限られた時間の中で集中して勉強に取り組んだことで、かなり力がついたと思います。この点に関しては、毎日遅くまで付き合ってくれた友人たちに、本当に感謝しています。
また、2年生から4年生まで履修していた「公務員特別演習」でも、警察官になる上で大切な力を身につけることができたと感じています。警察官の職務内容に関してグループディスカッションする機会が多かったので、多様な意見や視点を知ることができ、警察官に求められる知識や姿勢を学ぶことができました。
大学生活を振り返って、印象に残っている学修はありますか?
いくつかの警察関連の授業が印象に残っています。中でも「少年犯罪と法」は興味のある分野だったため、とても参考になりました。なぜ私が少年犯罪に興味を持つようになったかというと、その理由は地元の環境にあります。私の育った土地はあまり治安が良くなかったので、地元の友人の中には警察のお世話になったことがある人もいます。私がサッカーに打ち込めたように、彼や彼女たちも真剣に向き合える何かに出会っていれば、道を踏み外すことはなかったかもしれない。そう考えるうちに、少年犯罪や非行の防止に携わりたいと思うようになりました。
授業で警察関連の知識を深めていくにつれ、警察官が担う職責の重さをリアルに感じていきました。しかし、一方でその職務の可能性も感じることができました。自分が手を差し伸べることで少しでも道を踏み外す人を減らすことができたなら、その人たちの人生を救うことができるだけでなく、社会全体を良くしていくことにもつながるのではないか。その可能性を考えると、改めて警察官に対する思いを強めることができたのです。
採用試験に向けては、どのような準備をされましたか?
筆記試験の対策を友人と一緒に進めながら、並行して面接対策にも力を入れていきました。例年だと「就活実践キャンプ」という2泊3日の合宿で面接練習ができたのですが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う影響で、残念ながら中止に。コロナ禍での採用試験対策に不安を感じていましたが、公務就職支援室で試験直前に面接練習をしていただいたり、元警察官の先生が面接指導をしてくださったり、かなり強力なサポートを受けることができました。そのサポートのおかげで、大きな自信を得ることができ、他大学の学生にも差をつけることができたと思っています。
警察に勤めている先輩や従兄弟にも、志望理由書や自己PRを記入した面接カードを見ていただいたり、模擬面接をしていただいたりしましたが、私が応募した京都府警は面接で「想定外」の質問が出されると言われていました。そのため、ある程度の面接対策ができた時点で、必要以上に対策を講じることはせず、等身大の自分で臨むことにしました。
本番の試験でも、その成果を発揮できましたか?
そうですね。一次試験の筆記試験は、追い込みの効果があったのか、手応えを感じることができました。次の集団面接と体力試験も比較的力を発揮できたと思います。ただ、二次面接で「想定外」の質問が来ました。
父がいわゆる「転勤族」だったので「地元の警察」という概念が薄かった私は、少しでも警察官になれる確率を上げるために徳島県警も受験していました。これは本当に京都府警の面接なのだろうかと思うほど、徳島県警に対する思いを深く尋ねられ、「正直、これはちょっと厳しいかもしれない」と、面接中にそう感じていました。しかし、質問されている面接官の方に対して、顔だけではなく体ごと向けて傾聴・回答する姿勢を崩さない、どんな些細な動作にも区切りをつけてキビキビ動くなど、所作には最後まで注意を払っていました。元警察官の先生に指導していただいたことを思い出しながら、自分にできる精一杯のことをやり切って面接は終了しました。
合格を知った時は、どんな気持ちでしたか?
実は、合格発表の1日前に癌を患っていた父が亡くなったんです。採用試験中も病院と家を往復するなど、忙しい日々を送っていたのですが、合格発表の日は心身ともに疲れていて、ネットで合否を確認することなく眠ってしまいました。ところが、京都府警に勤めている先輩から「受かってるぞ」と電話が掛かってきたんです。寝耳に水とはまさにこのことで、とても驚いたのを覚えています。もちろん合格したことは嬉しかったのですが、「やった!夢だった警察に合格したぞ!」と声高に喜べるような状況ではなかったので、一人静かに合格の喜びを噛み締めてから霊前に報告に行きました。サッカーを続けてほしかった父の反対を押し切ってめざした道だったので、「初志貫徹して夢を叶えることができたよ」と報告すると同時に、改めて警察官になる覚悟が揺るぎないものになりました。
今後の抱負についてお聞かせください。
少年犯罪や非行の防止、再犯防止に尽力したいので、これからも少年法など、法律に関する勉強を続けていきたいと思っています。一人でも多くの子どもたちを非行の道から遠ざけたいし、非行に走ってしまった子どもたちには更生の道を示し、私に出会ったことで人生が変わったと言ってもらえるような警察官をめざしたいですね。将来、どのようなキャリアを積んでいけるかわかりませんが、今は、府民に一番近い現場で一生活躍できたらと思っています。
※掲載内容は取材当時のものです。