公務員・教員
リアルな現場を知り、強くなった使命感と覚悟。
消防官として、救助隊の高みを追求したい。
大阪市消防局の採用試験合格、おめでとうございます。
消防官を志すようになったのは、いつ頃からですか?
ありがとうございます。
はじめて消防官という仕事を意識したのは4歳の時。震度6弱の地震を体験したことがきっかけでした。地震が発生した時、家にいたのは私と兄だけ。部屋中の家具が倒れ、玄関の扉も壊れて開かなくなってしまいましたが、幸いにも近所の人に助けていただき、なんとか家の外に出られたんです。そこで私の目に飛び込んできたのが、救助に走り回る消防官の姿でした。怖くて泣きじゃくるしかできなかった当時の私には、その姿がとても印象的で、以来、災害に立ち向かう消防官に憧れを抱くようになりました。
消防官をめざして、大学ではどのような学修に取り組まれたのですか?
高校生の頃はサッカーに明け暮れていたので、法律に関する知識は大学から学び始めました。1年生の時に「法学の基礎」という授業で、その名の通り基礎から勉強し、着実に知識を積み上げていくことができました。少しずつ法律系の授業にも慣れていき、「警察法令概論」や「刑法総論(概論)」では、法律の観点から消防官と警察官との違いについて学ぶことができました。警察官には、命を最優先に考えつつも、さまざまな法令に則って行動すべきケースがあります。その一方、消防官は常に命を最優先し行動できます。そういった職業の背景にある法律も学べたので、採用試験の面接で「なぜ、警察官ではなく消防官を志望したのか」と聞かれたとしても、論理的に答えられる自信がつきました。
また、“公務員は誰のために仕事をしているのか”という、公務員に必要な倫理観を学べたのが「公務員特別演習」でした。最近、公務員の不祥事が世間を賑わせていますが、原因は倫理観の欠如にあるのではないかと感じています。私は公安系のクラスに所属していたので、所作についても細かい部分まで指導していただいたので、本番の面接でも私よりキビキビした動作の受験生はいなかったと思うほどでした。その点については、面接官の方からもお褒めの言葉をいただくことができました。
学生消防隊「SAFETY」にも参加されていますね。
はい。2年生から3年生までの間、学生消防隊「SAFETY」にも所属し、地域の防災イベントでサポートスタッフとして活動していました。「SAFETY」は、八尾市消防本部の方々と一緒に活動するため、消防官の仕事内容や地域住民との関わり方を直接的に学べる機会にあふれています。参加するたびに刺激をもらい、勉強のモチベーションにもつながりました。
時には、消防の厳しさを教えていただくこともありました。雑然と置かれた私たちのカバンを見た消防官の方が、「何かひとつの物がなくなるだけで、大きな事故につながる可能性がある。消防学校では、たとえ歯ブラシ一本でも、なくなったら見つかるまで全員で探す」と、教えてくださいました。こうした「器具愛護」の精神や消防官としての心構えを現役の方から学べたことは、経法大ならではのとても貴重な経験だったと思います。
大学生活で印象に残っていることはありますか?
3年生の時に、西日本豪雨の災害ボランティアに参加したことが印象に残っています。「少しでも被災者の方たちの力になりたい」。そんな思いでボランティアに取り組むなか、被災したお婆さんの話を聞いている時に「話をしたら気持ちが楽になった。ありがとう」と声を掛けていただいたんです。この時、人命救助だけではなく、心のケアも消防官の大切な仕事であるということに気がつきました。「次に被災地へ来る時は、ボランティアではなく消防官として。それも、人の気持ちに寄り添える消防官として参加する」と強く思った瞬間でした。
筆記試験に向けて、どのような準備をされましたか?
筆記試験対策としては、1年生から「Sコース(特修講座)」を受講したものの、サッカー部の活動に力を入れていたため、中途半端な取り組み方になってしまいました。案の定、2年生の冬に受けた消防官・警察官向けの採用試験模試では、思うような結果は残せませんでした。「このままではまずい」。そう思った私は、3年生からサッカー部を休部し、外部の予備校へ通うことに。Sコースで身につけた基礎的な知識を土台にして、1日12時間ほど勉強したこともあり、遅れを取り戻すことができました。今思うと、人生でこれほど勉強した時期はなかったと思います。こんなに勉強に打ち込めたのは、私と同じように消防官やその他の公務員をめざす仲間がいたからです。時に競い合い、時に励まし合いながら、遅くまで大学に残って勉強した日々は、かけがえのない思い出になりました。
消防局へヒアリングにも行かれたそうですね?
はい。3年生の11月頃、消防官の仕事現場をもっと知りたいと思い、個人的にアポを取って大阪市消防局西署を訪問しました。その時、応対してくださったのは、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨の現場で活動されていた副署長の方でした。具体的な活動内容から、かなり生々しい現場の話まで、消防官の方しか知り得ない貴重な話を伺い、自分が憧れている職業のリアルな姿を知ることができました。憧れや理想だけで消防官は務まりません。凄惨な現場でこそ、消防官としての責務が問われるという現実を知ったことで、むしろ消防官としての使命感や覚悟が強くなりました。
また、西日本最大の規模を誇る大阪市消防局は、大規模災害発生時に都道府県単位で編成される「緊急消防援助隊」の大阪府隊でもリーダー的な存在だと教えていただきました。「ここでなら消防官として大きく成長していける」。そう思った私は、地元の松山市消防ではなく、大阪市消防局を志望するようになりました。
本番の採用試験では、培ってきた力を発揮できましたか?
1次が筆記試験、1.5次が論文と体力試験、2次が面接試験という流れで行われましたが、いずれの試験でも落ち着いて自分の力を発揮できたと思います。面接試験では、終始おだやかな雰囲気で面接が進み、気がついたら終わっていたという感じでした。既に東京消防庁にも合格していたので、「本当に大阪市消防局に来るの?」と聞かれましたが、本当に第一志望であり、大阪市消防局の消防官をめざして努力してきたことを素直に伝え、面接は終了。「これで不合格なら仕方がない」と思えるほど、自分の思いをすべて伝えられた面接でした。
そして迎えた合格発表の日。ホームページで自分の番号を見つけた時は、「うれしい」という気持ちより、「これからだな」という気持ちのほうが強かったです。自分がこれから歩む道がいかにハードで、どれほどの高みへと続いていくのかを理解していたので、「今からでも、できることを準備していこう」と、これから先のことで頭がいっぱいになりました。
今後の抱負についてお聞かせください。
救急の知識は、消防学校で本格的に学ぶことになりますが、入学までに基礎的な勉強はしておきたいと思っています。また、体力もさらに向上させていきたいですね。消防官になってからは、まず「救助隊」に入ることを目標に努力していきます。それから経験や実績を積み「特別救助隊」へ。そして、将来的には大阪市消防局の全救助隊をまとめ、最先端の技術と高度な装備を備えている「特別高度救助隊」をめざしたいと考えています。また、各自治体の救助隊から編成される「国際消防救助隊」に入り、海外での救助活動にも取り組んでいきたいです。
※掲載内容は取材当時のものです。
学生消防隊
「SAFETY」
八尾市消防本部との協定により、2016年7月、大阪府で初となる学生消防隊「SAFETY」が本学で発足されました。第一期のメンバーは、消防官や警察官をめざす学生を中心とする50名。八尾市消防本部の消防官による指導のもと、放水訓練や傷病者搬送訓練、AEDの使い方講習等に取り組み、八尾市消防本部の防災設備査察に同行するなど、積極的な防災支援活動を展開。地域防災に貢献するとともに、体験から学べる、実践的なキャリア教育の場となっています。