公務員・教員
友人の叱咤激励で壁を乗り越えられた。
これからも立ちはだかる困難に立ち向かい、
犯罪から子どもや女性を守る活動に力を入れていきたい。
京都府警察本部の採用試験合格、おめでとうございます。
警察官を志したきっかけについてお聞かせください。
きっかけは小学生の時です。地元で非行少年に絡まれ、とても怖い思いをしたことがありました。怖くてどうしたらいいのかわからず、交番へ行って事情を話すことにしました。その時、話を聞いてくれた警察官の方がとても優しく、子どもながらに安心したのを覚えています。「大きくなったら、こんな警察官になりたい」と憧れを抱いた瞬間でした。
その憧れが明確な目標に変わったのが、高校3年生の時。進路について考えた時に、「小学生の時に経験した怖い思いを子ども達にさせたくない。警察官になって安心して生活できる環境を守っていきたい」と思い、本気で警察官を目指すことを決意しました。
経法大へ進学された理由は何ですか?
公務員合格実績と学修環境の良さ、オープンキャンパスで聞いた八尾市消防本部と連携したボランティアサークル「学生消防隊SAFETY」隊長の話も進学の決め手になりました。学生消防隊SAFETYは消防官を志す学生が所属するサークルなので、一見すると警察官とは無関係のように思えますが、事件・事故が起こった時に活かせる心肺蘇生法や、災害時に必ず役立つ倒壊訓練など、実践的な知識と経験を得られるという点は、他大学にはない大きな魅力でした。
大学ではどのような学修に取り組まれたのですか?
1年生の時から「Sコース(特修講座)」を受講して筆記試験対策に取り組みましたが、大学生になった解放感から、学修よりも遊びを優先してしまった時期もありました。講義内容についていくことができない部分が出て、さらにSコースから足が遠のくという悪循環にはまってしまいました。今振り返ってみると、警察官を本気で志す自覚が足りていなかったんだと思います。「このままではいけない」と、2年生になって学修に本腰を入れ、ようやく基礎学力が定着しました。3年生になってから、新型コロナウイルス感染症の影響で講義が動画配信型に切り替わったので、一人より友人と対策した方がはかどると考え、大学の演習室を借りて一緒に動画を見ながら勉強しました。着実に実力がついている実感はありましたが、模擬試験の結果が思うように伸びず、「もっと頑張らないと」という焦りの気持ちもありました。しかし、動画配信型の講義は自分のペースで勉強できるというメリットがあるので、じっくり勉強に向き合うことで確かな学力を手に入れられたと思っています。
また、公務員特別演習では元警察官の先生に指導していただき、実務に基づいた判断基準や行動原理を学ぶことができました。中でも印象的だったのが、警察官職務執行法についての授業です。警察官職務執行法は、警察官が職権職務を忠実に遂行できるように必要な手段を定めた法律なのですが、この法律に対する理解がなければ、いざという時に適切な対処ができない可能性があると、先生の実体験を交えて教えていただきました。市民から自殺するという通報があり現場に駆けつけたが、鍵がかかっていて家の中に入れないことがあったそうです。一刻を争う状況下で先生は、警察官職務執行法を行使して窓ガラスを割って家の中に入り、なんとか市民の方を救助したそうです。この場合、住人の許可なく家に入っても不法侵入にはあたらないという法律知識がなければ、もしかすると市民の命を救うことはできなかったかもしれません。法律は単なる知識ではなく、現場に必須のツールであることが身に染みて理解できました。
大学生活で印象に残っていることはありますか?
入学の決め手にもなった「学生消防隊SAFETY」での活動が印象に残っています。1年生から入隊して、八尾市消防本部の方々と一緒に地域の防災訓練に参加していました。人見知りだった私は、最初は市民の方々とうまく交流することができませんでしたが、市民の方から優しく話しかけてきてくださったり、消防官の方もサポートしてくださったり、その甲斐あって、積極的に防災知識をレクチャーできるようになりました。
「地域防災リーダー研修」では、住民の先頭に立って消火・救護活動に取り組むリーダーの意識を持って研修に参加し、実際に災害が起きた時のことをイメージしながら実践的な訓練を経験することができました。特に、女性目線で避難所運営の方法を検討できたのは貴重な経験でした。トイレの設置場所や体育館内の居住スペースのレイアウトなど、避難所運営は細かい部分まで気を配る必要があるので、この訓練を通して得た生きた知識は今後必ず役立つ時が来るだろうと思っています。
本番の試験に向けて、どのような準備をされましたか?
Sコースの公務員試験直前対策講座を受講しました。この対策講座で論文対策が手薄になっていたことに気づき、過去問を毎日一題ずつ取り組むようになりました。自治体の特徴や多発している犯罪をホームページで調べ、自分が考えた対策と実際に行われている対策とを比較し、論文の展開に深みを出す訓練もしました。
書いた論文は公務就職支援室に持ち込み、毎日のように添削していただきました。筆記試験を通過してから、模擬面接も毎日していただきましたが、それまで面接の練習をしてこなかったので、語彙力も知識量も乏しく、上手に伝えることができませんでした。そのような状態の私を根気強く個別指導してくださった職員の方には、本当に感謝しています。キャリアセンターでもエントリーシートと小論文の添削や面接の練習をしていただいたので、自信を持って本番に臨むことができました。
公務員特別演習の先生にも、試験直前に総仕上げとして面接の練習をしていただき、勇気と気合を注入していただきました。このような手厚いサポートのおかげで、論文も面接も対策当初からは考えられない程の成長を遂げることができました。
本番の採用試験では、培ってきた力を発揮できましたか?
筆記試験では十分に力を発揮できましたが、2次選考の面接試験で不合格になってしまいました。警察の採用試験は一般的に年2回実施されるので、気持ちを切り替え、2回目の試験に向けて再び勉強に打ち込むことに。しかし、不合格のショックからか勉強に身が入らず、頑張ろうとはしているけど、どこか頑張りきれない自分がいました。
ある時、そのような状態の私の姿を見た友人が、私を本気で叱ってくれたことがありました。「気持ちを入れ替えて勉強するんじゃなかったの!?何ひとつ変わっていないよ。このままだと、また不合格になるだけだよ」。この言葉にハッとした私は、ようやく心を入れ替えて勉強するようになりました。
そうして臨んだ2度目の採用試験。筆記試験も問題なく通過し、前回不合格になった2次選考の面接試験では、順番が一番目だったので、朝に気合を入れたテンションのまま、あっという間に乗り切ることができました。
合格発表の日は、大学で友人たちと一緒に結果を確認しました。画面上に私の番号が掲載されているのを確認した途端、友人たちの方が大喜び。私を叱ってくれた友人も飛び上がって喜んでいました。無事に合格できたことはもちろん嬉しかったですが、それ以上に素晴らしい友人に恵まれた喜びで胸が一杯になりましたね。
今後の抱負についてお聞かせください。
警察学校でも、警察官になってからも、きっとたくさんの困難が私の前に立ちはだかると思います。そのような時は「小学生の時に経験したような怖い思いを子どもや女性にしてほしくない」という初心を思い出し、すべての壁を乗り越えていきたいです。生活安全課への配属を希望しているので、希望が叶ったら非行少年を生まない社会づくりや犯罪から女性を守る活動に力を入れていきたいです。
※掲載内容は取材当時のものです。