公務員・教員
日本の自主防災力を高め、
「災害に強い街づくり」に貢献したい。
東京消防庁の採用試験合格、おめでとうございます。
消防官を志したきっかけについてお聞かせください。
ありがとうございます。
小さい頃からずっと憧れていましたが、消防官を目指そうとはっきり決意したのは小学校6年生の時。2011年に発生した、東日本大震災がきっかけでした。地震発生後、私の父はかなり早い段階で被災地へ入ってボランティア活動に従事したのですが、帰ってから現場での壮絶な体験談を聞かせてくれたんです。想像を遥かに超えた災害の恐ろしさを実感するとともに、「自分も何か力になりたい」と強く思うようになり、消防官になる決意を固めました。また、あまりにも被害が甚大だったことから、災害後に行う救助活動よりも災害前に行う防災意識の啓発活動の方に力を入れることで、何とか被害を最小限に抑えたいと考えるようにもなりました。
経法大を志望された理由は何でしょうか?
絶対に消防官になりたかったので、最適な進路は何かを調べていく中で経法大に出会いました。消防官や警察官になるための学修に力を入れている大学、施設や設備が充実している大学はいくつかありましたが、学生が主体となって活動する「学生消防隊SAFETY」のような団体は経法大だけ。「Sコース(特修講座)」や公務員特別演習といった学修環境にも魅力を感じ、「ここでなら自分の夢を実現できる」と確信して進学を決意しました。
消防官をめざし、大学ではどのような学修に取り組まれたのですか?
1年生から4年生まで、Sコースで公務員試験に向けた学修を進めました。Sコースには、公務員という同じ目標に向かって努力する仲間がたくさんいます。皆やる気に満ちているので、一緒に勉強するだけでとても良い刺激を受けることができました。私は何時間でも勉強し続けられるタイプなので、Sコースで出会ったなかま友人と夜遅くまで大学に残って勉強することが多かったですね。その友人とは4年間ずっと行動を共にしてきたので、これからも途切れることのない一生モノの絆ができたと思っています。
3年生になる頃からは個別で予備校にも通い、ますます勉強に没頭していきました。と言うのも、直前に受けた模試の結果がかなり悪く、「このままではまずい」と焦りを感じ始めたからです。早朝から大学の図書館で勉強し、夜は予備校で遅くまで勉強する。そんな日々をしばらく続けた結果、なんとか模試の結果も上向いていきました。Sコースと予備校の両立はハードな面もありましたが、大学の先生方が相談に乗ってくださったり、授業外で個人的に指導してくださったり、手厚くサポートしていただいたおかげで、着実に実力がついていくのを感じることができました。
手厚いサポートという面では、「公務員特別演習」を担当されている元警察署長の西口先生にも大変お世話になりました。演習では「面接ではどこをどう見られるか」といった実践的な練習だけでなく、公務員に必要な資質や倫理観について、幅広く指導していただきました。特に面接の練習は、答えられない質問がなくなるほど徹底的に鍛えていただきましたね。演習とは別に、個人的に論文の添削や面接の練習などもしていただいたので、本当に感謝の気持ちしかありません。
学生消防隊「SAFETY」にも参加されていますね。
はい。入学の決め手のひとつでもあったので、かなり期待して入隊しました。しかし、入隊当初は同期隊員とモチベーションの差を感じることもありました。自分から積極的に働きかけて貪欲に経験を積もうとする私と、指示されたことを真面目にこなす同期たち。その差にモヤモヤした感情を抱きつつも、八尾市消防局の方々と積極的にコミュニケーションを取るなど、湧き出る情熱に従って行動するうちに、独自の信頼や知識を得られたと感じています。そのような姿勢が評価されたのか、2年生では部隊長に、3年生では隊長に任命していただきました。
隊長になってからは年間の訓練計画を学生で立案したり、知識や技術がまだ備わっていない1年生隊員に向けた講習会を開催したり、活動内容と隊員意識の改革にも着手しました。大学のサポートを極力受けずに実働する、本当の意味での学生消防隊を目指しました。残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響で十分な活動ができなくなり、不完全燃焼に終わってしまったのが今でも心残りです。期待して入隊してくれた隊員に対しても、本当に申し訳ないと思っています。
大学生活で印象に残っていることはありますか?
3年生の秋に、千葉県で発生した台風・豪雨災害のボランティア活動に参加したことが印象に残っています。「SAFETY」メンバーと共に現場に赴き、2日間、瓦礫撤去などの活動に従事しました。暴風によって壊れた家屋が多かったのですが、沖縄出身の私の感覚では、事前対策の不十分さが招いた結果でもあると感じました。とはいえ、誰が悪いわけでもありません。水や泥で汚れて重みが増した畳を搬出しながら、「防災意識や知識を広く徹底することで、こうした被害を少しでも減らしたい」と改めて強く思いました。
本番の試験に向けて、どのような準備をされましたか?
新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響で、ずっと自宅で教養試験の勉強に励んでいました。しかし、試験の日程も延期となり、正直かなりペースを乱されました。いつ試験があるかわからない状況下で、Zoomを使って仲間同士で勉強会をしたり、先生に個別で悩みや不安を相談したりすることで、何とかモチベーションを保っていた感じですね。試験本番まで気持ちを切らさず努力を続けられたのは、共に消防官という目標を目指す友人たちや大学教職員の方々の存在があったからだと思います。
面接試験に対する準備としては、公務就職支援室とキャリアセンターで毎日のように模擬面接をしていただきました。公務員特別演習で徹底的に対策できていると思っていましたが、盲点をついた質問を上手にされるので、最後の仕上げとして、とても役立ちましたね。おかげで自信満々の状態ではなく、適度な緊張感を持って試験本番に臨むことができました。
本番の採用試験では、培ってきた力を発揮できましたか?
一次の教養試験では、思うように実力を発揮できませんでした。人文科学の分野が苦手だったので、数的処理などの得意分野に時間を割くことで、ギリギリ通過できた感じですね。そのような状態の教養試験の結果をリカバーしたのが論文でした。内容は、世代別のネット利用目的と媒体を集計したグラフを読み解き、消防は今後どのように広報していくべきかを論述するというもの。元から文章を書くのが得意な上に、先生方にも何本も論文を添削していただいていたので、実力を発揮して納得のいく論文を書くことができました。
二次選考の個人面接はかなり緊張しましたが、消防に関する知識には自信を持っていましたし、質問にも的確に答えることができたと思います。比較的スムーズに質疑は進み、あっという間に面接は終了しました。
合格発表の日は別試験の選考中だったため、すぐにホームページで合否を確認することができず、ヤキモキしながら選考が終わるのを待っていました。選考が終わって携帯電話で合否を確認しようとしたちょうどその時、東京消防庁を一緒に受験した友人から着信が。「受かってるぞ!」という友人の声を聞いた瞬間、今までの努力が一気に報われた気がしました。
今後の抱負についてお聞かせください。
防災意識の啓発に力を入れたいと考えているので、多くの人が志望する消防や救助ではなく予防課への配属希望を出しました。とはいえ、現場での消防・救助の経験がなければ、防災指導にも説得力が生まれないため、現場での活動にも従事したいと思っています。
南海トラフ地震の発生も予想されている中、防災への意識は高まりつつあります。この流れに乗って日本の自主防災力を高め、消防という立場から「災害に強い街づくり」に貢献していきたいですね。
※掲載内容は取材当時のものです。
学生消防隊
「SAFETY」
八尾市消防本部との協定により、2016年7月、大阪府で初となる学生消防隊「SAFETY」が本学で発足されました。第一期のメンバーは、消防官や警察官をめざす学生を中心とする50名。八尾市消防本部の消防官による指導のもと、放水訓練や傷病者搬送訓練、AEDの使い方講習等に取り組み、八尾市消防本部の防災設備査察に同行するなど、積極的な防災支援活動を展開。地域防災に貢献するとともに、体験から学べる、実践的なキャリア教育の場となっています。