公務員・教員
大学での学びが女性警察官という夢を最短で叶えてくれた。
これからは女性ならではの視点で、地域の安全を守り続けたい。
京都府警察の採用試験合格、おめでとうございます。
警察官を志したきっかけについてお聞かせください。
ありがとうございます。
警察官を志すようになったのは、小学校3年生の時です。警察官に密着したテレビ番組で、新人の女性白バイ隊員が小さな体で職務に励んでいる姿を観て、「こんなにもカッコいい仕事があるんだ」と憧れを抱きました。次の日、学校でさっそく警察官について調べ、白バイ隊員以外にもさまざまな職種があることを知り、「やっぱり警察官って、すごい仕事なんだ。私も警察官を目指そう」と小学生ながらに決意しました。
人の役に立つ仕事なら警察官以外にもたくさんありますが、その中でも最も身近な「暮らし」や「地域の安全」を守ることで役立てる仕事は警察官だけです。一人で夜道を歩いている時に警察官の姿や交番を見ると安心できるように、その存在だけで人の役に立てる仕事は他にないと思います。警察官という誇り高い仕事に就ける喜びと責任を噛み締め、1日も早く世の中の役に立ちたいと思っています。
大学ではどのような学修に取り組まれたのですか?
法学部の法律関連科目や「公務員特別演習」、「Sコース(特修講座)」など、さまざまな学修に取り組みました。学部の授業では公務員採用試験や実際の職務にも役立つ知識を得ることができたと思っています。たとえば2年生の「警察学入門」では、警察の歴史や警察法制の変遷など基礎的な内容から、警察法などの関係法令に基づく適正な権限行使についてなど、専門的な部分までを学修できました。また、「刑事裁判と法」や「刑事手続法」では、実際の判例を基に捜査や公訴、公判の流れを学修し、刑事手続の全体像を理解することができました。机上の空論ではなく実際にあった判例を基にしているため、身近な事柄として感じられ、「この場合はこの法律が当てはまる」とスムーズに考察を深めていくことができたと感じています。
そのような学びをさらに深め、より試験内容に沿った学修を進められたのが「Sコース(特修講座)」です。特に実際の公務員採用試験でも役立った内容は、数的推理や判断推理の解き方。テキストではひとつの解き方しか掲載されていませんが、Sコースの先生はさまざまな解き方を教えてくださるので、その中から自分に合った解法を選ぶことができました。そのため、どんな問題にも対応できる応用力が身についたと思います。友人の中には数種類の問題集を解いている人もいましたが、私はSコースで使用した問題集を繰り返し解き、その一冊を完璧に解くことで苦手分野を克服していきました。
元警察官の先生が教えてくださる「公務員特別演習」では、グループワークに取り組むことが多かったです。たとえば高齢者ドライバーによる事故などの時事問題をグループで考察し、どのような防止策が考えられるのかも含め、クラスメイトの前で発表することに取り組みました。グループ内で議論する時はもちろん、他のグループの発表を聞いている時も自分とは違う視点や考察を知ることができ、とても良い刺激になりました。また、グループワークを通じて議論・考察する習慣がついたことで、普段から社会問題に意識が向くようになり、自分なりの考えを持つようにもなりました。
ゼミではどのような研究に取り組まれたのですか?
警察法と警察官職務執行法を重点的に研究しました。先生から課題図書が渡され、グループごとに分担し、その内容を研究・要約して発表していくのですが、定義が曖昧な条文を噛み砕いて具体的にすることが難しかったです。特に頻出するのが「社会通念上」という言葉です。「任意の取り調べであっても、社会通念上相当と認められる限度内でなければならない」といった使われ方をするのですが、「社会通念上」とは一体どのようなことなのか?その限度はどこまでなのか?ということを掘り下げて議論していくのです。こうした知識は警察官が職務を執行する際に必要になるため、ゼミでの学びは非常に実践的かつ実務的な内容だったと感じています。
大学生活で印象に残っていることはあります?
1年生から入隊していた「学生消防隊(SAFETY)」での活動が印象に残っています。入隊する学生のほとんどは消防官志望の学生ですが、地域と連携して活動できる点に興味を持ち、警察官志望でしたが入隊を決意しました。活動内容としては、八尾市消防本部の方々と一緒に小学校や市役所などで開かれる地域の防災訓練イベントに参加し、防災知識を住民にレクチャーするというものです。住民の方に教えるためには、まずは私自身が正しい知識を身につけなければなりません。この活動を通して消火器の使い方や心肺蘇生法など、知っているようで知らない防災知識を正しく学べたことは、警察官志望の私にとっても有益なことだったと思っています。「暮らし」や「地域」を守るという点において、消防官と警察官の仕事は似ていますが、アプローチの方法はまったく違います。学生消防隊の活動では八尾市消防本部の方と直接話をする機会が多かったので、消防と警察の違いを改めて認識することができ、警察官への想いがより一層強くなっていきました。
また、3年生の時に経験した下級生の学修サポートを行うメンター活動も印象に残っています。先生の勧めで1年生の演習(ゼミ)のメンターを担当することになったのですが、警察官に対して純粋で強い憧れを抱いている学生たちと触れ合う時間は、警察官を目指して真剣に勉強に打ち込んでいた私にとって、初心に立ち返る大切な時間でもありました。
試験本番に向けて、どのような準備をされたのですか?
京都府警はインスタグラムで説明会の情報を発信していたので、日々確認し、何度も説明会に参加しました。また、個別で女性警察官の方に面談をしていただき、さまざまなお話を聞かせていただきました。この時に聞いた話を自分なりにまとめ、面接時の受け答えにも活かせるようにしました。
また、京都府警で過去に出題された作文課題に取り組み、公務就職支援室に通って添削をしていただきました。最初は文章の構成から見直す必要がありましたが、的確な添削のおかげで徐々に消しゴムを使うことなく書き上げられるレベルにまで成長できたと感じています。公務就職支援室では模擬面接も実施していただきました。最初は緊張で固まってしまい、用意してきた回答をまったく話すことができませんでした。すっかり自信を失い、模擬面接の予約をキャンセルしたこともありました。しかし、「ここで逃げてはだめだ」と気持ちを入れ替え、週に2回ほどのペースで通うようになりました。毎回、反省点をメモして次回の面接に活かしていくことで、自分でも驚くほどの成長を遂げられたと感じています。
これほどしっかり対策をしていても、試験本番が近づいてくると、どうしても不安な気持ちが出てきました。そのような時は、ゼミを担当していただいた元奈良県警察OBの石川先生に素直な思いを打ち明けました。先生は「目を逸らさずに、自分の信念を伝えればいい。胸を張って受けてこい」と背中を押してくださいました。あれこれ対策を教えていただくよりも、この言葉だけでとても安心することができ、胸を張って本番に臨むことができました。
本番の試験でも、その成果は発揮できましたか?
筆記試験も作文も、これまでの成果をしっかり発揮できたので手応え十分でした。一次の集団面接では、公務就職支援室で練習したように、相手の目を見て自分の想いを端的に話すことができました。最終面接は30分間でしたが、人生で一番短い30分に感じました。どれだけ答えられるかを試すかのように、3名の面接官から次々と質問され、とにかく答えることだけで必死だったのを覚えています。中には「警察学校と大学の違いはどこ?」「自分を動物に例えるとなに?」といった想定外の質問や、正解がわからない質問もありました。帰宅後、「これは不合格だろうな」と落ち込んでいたので、合格発表のサイトで自分の番号を見つけた時は、すぐには信じられませんでした。何度も番号を見直し、さらに携帯電話の電源を入れ直してから再確認したほどです。合格通知が手元に届いた時にようやく実感がわき、「夢が現実になったんだ」と心の底から喜ぶことができました。
今後の抱負についてお聞かせください。
経法大で学んだことのすべてが、最短距離で夢を叶えることにつながりました。次は警察官としての夢を実現させる番です。京都府警には「平安なでしこ交番」というものがあり、将来的にはそこで勤務したいと思っています。平安なでしこ交番では、女性警察官が24時間体制でストーカーやDV、性犯罪などの被害対応や、女性や高齢者、子どもからの相談に対応しています。女性警察官ならではの視点で役立てることが世の中にはたくさんあるはずです。女性警察官として、地域の安全を守り続けていく。これが次に最短距離で叶えたい私の夢です。
※掲載内容は取材当時のものです。