公務員・教員
テコンドーに打ち込んできたなかで鍛えた心身を、
これからは人々の安心を守るために役立てたい。
兵庫県警察の採用試験合格、おめでとうございます。
警察官を志したきっかけについて、お聞かせください。
ありがとうございます。
警察官をめざそうと考えたのは、大学に入学する時です。
私は小学生の頃からテコンドーに取り組み、高校生の時には組手で全国ジュニア大会2位になり、型では世界大会出場を果たしました。そして「大学で、テコンドー選手としてさらに成長したい」と考え、スポーツ推薦で経法大に入学したのです。経法大のテコンドー部は、全日本大会でも数々の実績をあげてきた名門。自分を高めるには、絶好の環境だと思いました。
また、入学を決める時、経法大は公務員をめざす学生へのサポート体制が充実していて、公務員採用試験の合格実績が高いということも知りました。「それなら警察官をめざすための勉強をしてみよう。警察官なら、テコンドーで鍛えた体力が役に立つ」と考えたんです。ただ、「どうしても警察官になりたい」といった強い気持ちではなく、最初はただ何となく、といった感覚でした。
では入学後、Sコースの公務員講座を受講されたのですか?
はい。1年生の時、公務員基礎講座を受講し、公務員採用試験問題について教わりました。
想像していたよりは難しくなく、特に数的推理の問題などは、もともと数学が得意だったこともあり、最初からスムーズに理解が進みました。そして「これなら筆記試験は合格できそう」という自信がついたこともあり、2年生以降はテコンドーに集中するためにSコースの受講を辞め、その分の時間を練習に充てました。当時はそれほど警察官をめざすことに真剣ではありませんでしたし、何よりテコンドーを頑張りたいという気持ちが強く、そのことで頭がいっぱいだったんですよ。
では、テコンドー部での活動についてお聞かせください。
経法大のテコンドー部は経験・実力ともにすごい先輩ばかりで、入部したばかりの頃は、ついていくだけで精一杯でした。全国でもトップクラスの選手である先輩たちは、試合に対する感覚が私とはまったく違っていたのです。ワザを出すタイミング、対戦相手との駆け引き、一瞬の判断力。先輩と実戦形式の練習を重ねるなかで、テコンドーは考えるスポーツなのだと改めて感じました。そして「こういう時に私は相手の蹴りを受ける」など気づいたことや先輩からいただいたアドバイスなどを、忘れないように毎日ノートに書き留めました。その積み重ねがあったからこそ、強くなれたと思います。私は上段蹴りなどの得意技は持っていたのですが、試合でうまく出すチャンスを作れないというのが課題でした。でも大学のテコンドー部での練習のおかげで、得意技を試合で生かすための試合運びを学ぶことができました。また、女子部員が少なく、男子部員との練習のなかで、パワーやスピードをかなりアップさせることもできたと思います。
そして2年生の時、全日本大会で私は3位という成績を収めました。でも「悔しい」というのが、その時の正直な気持ちでしたね。やっぱり優勝したかったので。ただ、練習の成果を全日本の舞台で発揮できたと感じたので、そこは良かったと思います。
自分の将来について、本気で考えるようになったのはいつ頃ですか?
3年生になった頃から、本気で考えるというより、少し焦りを感じるようになりました。周囲はみんな就活の準備を始めているのに、私は毎日テコンドーの練習。2年上の先輩が、消防官の採用試験に合格されたのも、刺激になったと思います。先輩が勉強にも一生懸命取り組まれていたのを知っていたので、「自分もちゃんと勉強して、採用試験に合格したい」と感じました。
それでも、しばらくはテコンドーと勉強、どっちつかずのモヤモヤした日々が続きました。3年生の冬に日本代表選考会があり、そこで好成績を収めたいという想いがあったからです。でも結局、私は大会で結果を出すことができず、そこで自分に区切りをつけ、以後は警察官をめざすための勉強に集中しました。4年生になる直前で、ギリギリではありましたが、そこから本当に頑張ったと思います。
採用試験に向けて、どのように準備を進めていったのですか?
2年生以降、Sコースは受講していませんでしたが、公務員特別演習は受けていました。この授業を通じて、面接やグループディスカッションの練習ができたのは良かったと思います。実際に、兵庫県警察の採用試験のグループディスカッションでは、公務員特別演習での集団討論で話し合った内容がテーマになったのです。授業で自分なりに深く考え、他の学生の意見もたくさん聞いていたテーマだったので、採用試験のディスカッションでは積極的に発言することができました。
筆記試験に向けた勉強は、公務員特別演習で仲良くなった友達と一緒に取り組み、お互いに教え合って対策をとりました。体力検査については、テコンドーで鍛えてきた自信があったので、特に対策はしていません。面接の練習は、公務員特別演習に加え、大学主催の公務員試験対策合宿で集中的に取り組んだことが役に立ったと思います。
合宿での面接の練習では、どのような指導を受けられたのですか?
兵庫県警察の一次試験を終え、二次の面接試験を直前に控えての合宿だったのですが、それにも関わらず、その時の私は何も話せなくなっていたのです。公務員特別演習でも面接の練習をしてきたつもりでしたが、本番目前になって緊張が高まったのかもしれません。そんな私に、先生から「髙本は何よりまず、テコンドーだろう」と言っていただき、それで気が楽になったと思います。私の一番のアピールポイントは、テコンドーに打ち込んできたこと。そのなかで精神的にも成長してきたと思いますし、面接でもそれをしっかりと伝えることが大切だと、改めて気づきました。おかげで兵庫県警察での面接試験では、それほど緊張することなく、リラックスして話すことができたと思います。
合格を知った時は、ものすごくうれしかったです。家族も、先生も、テコンドー部の仲間や監督も、みんなが一緒に喜んでいただき、「頑張ってきて良かった」と感じました。
今後の抱負についてお聞かせください。
これまでは自分のためにテコンドーに打ち込んできました。でもこれからは、テコンドーで鍛えたこの心と体を、社会のために役立てたいと思っています。神戸で育った私が、地元の兵庫県警察で働くことができるのは、とても幸せなことです。人々の暮らしの安心を守れる、頼りがいのある警察官をめざします。
もちろん、テコンドーも続けていきます。高校では組手も型もやってきましたが、大学では組手だけでしたので、また型をやりたいですね。一つ一つの動作で力強さを表現するのが、型の面白さ。大学時代に組手で上をめざした経験をふまえ、型でもまた上をめざしたいと思います。それが、警察官としての私の成長にも結びつくはずです。
※掲載内容は取材当時のものです。