進学

卒業論文を通して見えてきた、ジェンダーギャップのリアル。
NGOを立ち上げ、一人でも多くの子どもを救いたい。

大阪大学大学院 国際公共政策研究科 合格プトリ アナンダ さんPUTRI ANANDA国際学部国際学科卒(2022年3月) / ジャカルタ国立大学 出身

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大阪大学大学院 国際公共政策研究科への合格、おめでとうございます。
大学院進学を志したきっかけについて、お聞かせください。

大学院への進学を決意した背景には、私が生まれ育ったインドネシアの社会情勢が深く関係しています。子どもの頃は誰もが将来の夢を無邪気に思い描くものですが、インドネシアでは経済的な理由からその夢を諦めざるを得ないことが多々あります。私も小学4年生の時に、成績が良く、将来の夢もある友人が経済的な理由から進学を断念するという現実に直面しました。その友人の姿を見た時、子どもながらに私は「友人と同じような境遇の子を一人でも多く助けるために、大きくなったら経済的にサポートできるシステムをつくろう」と決意しました。日本へ留学したのも、この夢を実現するためにもっと勉強したかったからです。そして、大学で学修を進めていくうちに、私の夢を叶えるには国連のユニセフに入ることが一番だと考えるようになり、ユニセフに入るために大学院で専門的な学修をさらに深めたいと思うようになりました。

大阪大学大学院 国際公共政策研究科を選ばれた理由は何ですか?

現在、国際社会はかつてないスピードで発展を遂げている一方、紛争や人権侵害、環境破壊、深刻な貧困や格差拡大、不況など、数えきれない課題にも直面しています。国際公共政策は、平和・人権・環境・幸福・安心な生活といった国際社会全体にとっての共通利益について、「法」「政治」「経済」の側面から研究する学問です。この大学院であれば、様々な国際的な問題を学修でき、元国連職員の教授もいらっしゃるので、私の夢を実現させるには最適の場所だと思い、進学を希望しました。

大学の学びで、将来的に役立ちそうなものはありますか?

2年生の時に履修した「NPO・NGO論」は、まさに将来に直結する内容だったと思います。いつかは自分でNGO団体を立ち上げたいと考えているので、NGOの活動内容だけでなく、設立・運営・管理について幅広い知識を得ることができました。
また、将来必須になる英語力については、英語関連の全授業が役立っていますね。たとえば、「Business Communication」ではビジネスレベルで使える実践的な英語運用能力を磨くことができました。「Current Affairs」では国際的な問題について英語でディスカッションするので、英語力に加え、専門的知識を身につけることができました。国際学部は1年生から毎日英語の授業があるため、英語を学ぶことが日常的になり、着実に力を伸ばしていけたと感じています。

ゼミでは、どのようなことを研究されたのですか?

ゼミでは移民問題をテーマの中心に据え、全員でディスカッションしながら理解を深めていきました。戦争や紛争によって移民問題が発生した際、その影響を最も受けるのは子どもです。国連機関のユニセフやUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通して、募金などの救済手段を講じることはできますが、どうすれば本質的に子どもたちを助けられるのか、世界中の事例や取り組みを参考にしながら研究を進めていきました。
子どもたちの問題の中から、私が卒業論文のテーマに選んだのは「チャイルドマリッジ(児童婚)の現状」です。世界には18歳以下で結婚を強いられる子どもたちがたくさんいます。インドネシアにも児童婚の風習があり、特に西スラウェシ州で盛んに行われています。なぜ、このような風習があるのか?なぜ、被害にあっているのは女性の方が多いのか?など、さまざまな疑問が生じてきたので、チャイルドマリッジの解消に取り組むNGOにコンタクトを取り、団体のトップに独自にインタビューしました。その結果、男性は結婚に際して女性の家に持参金を渡す風習があり、女性の教育水準が高いほど持参金も高くなるということを知りました。そのため、少しでも持参金を節約しようと結婚相手の低年齢化が進んでいるということなどがわかりました。
しかし、私が問題だと思ったのはこの風習自体ではなく、女性を軽んじている男性の考え方そのものです。SDGs(持続可能な開発目標)で「ジェンダー平等の実現」が掲げられているように、女性の不当な扱いは児童婚に限らず世界中に蔓延しています。子ども、特に女の子が自由に生きられる社会を実現できれば、女性の社会参画も増加し、貧困の連鎖や教育の欠如などを断ち切る手助けになるはずです。私はこの卒業論文の研究を通して、より現実に迫った専門知識を学ぶことができ、将来の夢に向けた大きな一歩を踏み出せたと感じています。

大学生活で印象に残っていることはありますか?

卒業論文の内容をベースにして、4年生の時に研究発表大会に出場したことが印象に残っています。卒論で取材したNGOの方に紹介していただき、実際に児童婚をした女性にもインタビューできたので、より真に迫った研究発表を行うことができました。発表後、先生からの質疑に対しても、しっかりと根拠を持って論理的に受け答えでき、ハイレベルな研究発表に仕上げることができたと思っています。その結果、1位を獲得することができ、とても満足しています。
また、経法大で学ぶ留学生は多国籍なので、さまざまな文化やルーツを持つ友人ができたことも掛け替えのない財産となりました。インドネシアと日本を比べるだけでも多くの文化的差異がありますが、さらに中国、韓国、モンゴル、ブータン、ドイツ、ウクライナなど、さまざまな異文化が混ざり合い、刺激的な大学生活を送ることができました。

大学院の入学試験には、どのように臨まれましたか?

大学院への進学を希望する学生対象の講座を受講し、そこで研究計画書の書き方を徹底指導していただきました。私の場合は研究テーマがはっきりしていたので、ゼミの先生からは「卒業論文では取り上げられなかった課題を浮き彫りにし、研究計画書に落とし込んでいくのが良い」とアドバイスをいただきました。講座とゼミの先生のサポートのおかげで研究計画書を完成させることができたので、とても感謝しています。
大学院の入学試験は研究計画書と面接なので、研究計画書が完成した後は面接練習にも取り組みました。大学院講座の先生は、実際に大学院で面接試験を担当した経験もあり、「このような質問では、このポイントに気をつけて答えた方が良いよ」など、実践的なアドバイスをしてくださいました。こうした準備のおかげで自信を持って試験に臨むことができ、本番の面接でも手応えは十分でした。

今後の抱負についてお聞かせください

まずは、チャイルドマリッジ(児童婚)やヒューマンセキュリティ(人間の安全保障)などについて、大学院でもっと深く研究したいですね。そして、ユニセフなどの国連機関で働きながら経験を積み、将来的には自分でNGO団体を立ち上げたいと思っています。経済的な要因や構造的な要因によって、虐待、搾取、権利の侵害などに苦しむ子どもは世界中にたくさんいます。これはとても悲しい現実ですが、だからこそ解決に向けて取り組む意義があり、一人でも多くの子どもを救うことが、世界を良くしていくことにつながります。ジェンダーギャップ(男女の違いにより生じる格差)解消を中心により良いサポート体制を構築できるように、これからも学びと挑戦を続けていきたいですね。

受験生の皆さんへのメッセージ

大学には本当に幅広い学修領域がありますが、周りに流されて学修をしているだけではつまらないし、理解を深めていくこともできません。そのため、まずはどんな分野に興味があって、何をおもしろいと思うのか、自分と向き合ってみてください。興味関心のあることを学修していれば、4年間という時間は決して長くはありません。あっという間に終わってしまいます。反対に、興味関心のないことを嫌々学修していると、4年間はとても長く感じられるでしょう。モチベーションを高く、充実した日々を過ごすためにも、しっかり自分と向き合ってくださいね。

※掲載内容は取材当時のものです。

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